2018年12月1日土曜日

『ユーフォルビアの回転』


今日が秋の中で一番過ごしやすかったと 後に振り返るであろう日に、僕はペットの散歩に来ていた。外に出なければ損だと一目瞭然だというのに、不思議と その公園にはヒトが全くいなかった。
今にして思えば、この時点で家に帰っていれば良かった…。



そう遠くない昔、数多ある植物の中から突然変異が生まれた。当初は目撃例が少なく、都市伝説として片付けられていたが世界各地で同現象が報告されだし、いよいよヒトは認めざるを得なくなった。


ある日、植物は自ら歩き走り飛びまわりだした。
植物は能動活動を選択したのだった。

太古より根付くことをモットーとしてきた生き物のアイデンティティを揺るがす大変革だった。
果たして、進化なのか退化なのか…。ともあれ植物は新しい道を歩きだした。
原因は未だ不明。
有力な仮説としては、紫外線と葉緑素の関係性の変化だと言われているが決定打はない。
世界の困惑をよそに、学者たちは鼻息荒く日夜研究をしている。兄によると、退屈が一番の敵なんだそうだ。謎が少なくなってきて知的飢餓に陥っていたタイミングでの大事件。
純粋に謎を追い求める者、歴史に名を残そうと名声欲に取り憑かれた者、そそのかされて経済利益を企む者などで、学会は、しっちゃかめっちゃかだとか。一般人、しかも学生にここまで明かして大丈夫か…。知りたくなかったオトナの世界ってヤツだ。

植物達に起きたこの現象の大きな共通点は『動く』というだけで種により千差万別だった。

実は、我が家にも新植物(という俗称で皆 呼んでいる。)がいる。
名前はロカイ

キジカクシ目ススキノキ科ツルボラン亜科の『医者いらず』で有名なアロエである。
これは、別にうちが特殊な環境だからではない。アロエは、あまりにも新植物化が激しく 新植物の中では最もポピュラーな部類に入っている。当初は政府も躍起になって捕獲を試みたが、数の多さに太刀打ち出来ず、バタバタしている間にアロエのある程度の安全性の声明が出されたので、うやむやになった。今やペット化しつつある。
アロエ万能薬信仰者(老人が多い)は、ホッと胸を撫で下ろしたが、得体のしれないものに対する拒絶反応が より強いのも老人達だったので、『アロエ誘拐事件』の被害者と犯人は同年代だったりする。

アロエの傾向としては、大体が四つ脚でおとなしいが、開花時には凶暴になる。あと、ヨダレ(?)が傷に効く。この点はアロエらしい特徴だ。

さて、現状に戻ろう。
そんなアロエのロカイが 誇らしげにズルズルと何かをひきづって僕の前で口を離した。
今までも何度かあった。どんぐりを持ってきたり、どこからか貝を持ってきたり。獲物を飼い主に自慢する猫か犬のようだと微笑ましく思っていたのだが、今回ロカイが見せてきたのは




明らかに見たことがない
金色に輝く新植物だった。

end…?